【高齢の親が免許返納したきっかけとタイミング】家族ができること

認知症兆候と金銭トラブルが映す運転への不安

母が免許返納を決断したのは、運転中のヒヤリ・ハットではなく、金銭管理の著しい低下がきっかけでした。ある日、生命保険や公共料金の口座振替が返済できなくなり、督促状が立て続けに届いたのです。通帳には残高がほとんど残っておらず、頻繁に大きな金額が引き出されている記録もありました。これまで家計のやりくりを任せていた母ですが、明らかに認知症の初期症状による判断力の低下と感じました。

「お金の管理がこれでは、運転していてもブレーキの踏み忘れや踏み間違えを起こすのではないか」──そんな不安が頭をよぎり、母の運転免許返納を促すことを決めました。

返納を説得した言葉

母に「免許を返納しよう」と伝えるのは簡単ではありません。そこで私は、メディアで報じられる高齢者の重大事故の事例を例に出し、次のように話をしました。

「最近テレビでも、高齢のドライバーが重大事故を起こすニュースが増えているよね。
もしお母さんが同じようになったら、そのとき一番つらい思いをするのはお母さん自身だし、私たち家族も絶対に放っておけないよ。だから、本当に心配だから、返納してほしい。」

普段あまり母と話をしないためか、自分のことを心配してくれたことがうれしそうでした。そんな思いもあったのか、少し話し合っただけで、返納に対して強い反対することもなく、以外にも簡単に応じてくれました。

親の受け止め方

母は最初、「まだまだ運転できる」と返納に抵抗を示しました。運転は長年の生活の一部であり、自由と自立の象徴だったからです。しかし私が抱える「母の認知機能低下に伴う危険性」を丁寧に伝えたことで、母も自分の現状を少しずつ受け入れはじめました。

  • 共感を示す:「運転しなくなると不便だと思うよね。でも、安全に暮らすほうが大事だよ。」
  • 選択肢を示す:「車がなくても出かけられる方法、いくつか試してみようか」
  • 寄り添う姿勢:「困ったときはいつでも私がいるから、大丈夫だよ」

こうしたコミュニケーションを重ねることで、母から「そろそろ返そうか」という言葉を自然に引き出すことができました。

運転代替手段の模索

私は、病院への送り迎えや買い物などを一緒に行くことにしています。ただ、仕事をしていればなかなか自分が車を出したり付き添いをすることが難しいケースもあるでしょう。免許返納後も、生活圏内で無理なく移動できるよう、次のような方法をぜひ参考にしてみてください。

  • 家族や友人による送迎
    送迎のスケジュールをあらかじめ共有カレンダーに登録し、定期的に助け合う。負担が偏らないよう、複数人で分担すると安心です。
  • 公共交通機関の利用
    地域を走るコミュニティバスやシルバーバス、路線バス・電車の経路と時刻表をチェック。シニア向け割引や定期券を活用できる場合もあります。
  • タクシー・配車アプリ
    スマホアプリで手軽に呼べるタクシーを利用。事前登録しておくと「呼び出し→料金確認→乗車」がスムーズです。複数回利用するなら定額プランを調べておくのもおすすめ。
  • ネットスーパー・宅配サービス
    食材や日用品の買い出しはまとめてネット注文&宅配に切り替え。重い荷物の持ち運びが不要となり、買い物の不便さを大幅に軽減できます。
  • 地域の見守りサービス
    自治体や民間団体が提供する「見守りタクシー」や「買い物代行」を調べて登録。必要に応じて利用することで、外出のハードルを下げることができます。
  • シェアカー・レンタカー
    「運転が必要なときだけ」短時間で借りられるカーシェアリングやレンタカーも選択肢のひとつ。使い方や料金体系を事前に把握しておくと便利です。

これらはいずれも一例です。ご家族のライフスタイルや地域の交通事情に合わせて、いくつかを組み合わせることで「車なしでも安心して暮らせる」環境を整えてみてください。

家族として支えた日々

免許返納後、母からは「ちょっと不便」「返納したことを心底後悔している」と愚痴をこぼされることもありました。

一度、母がこっそり鍵を持ち出して運転しようとしたことがあり、慌てて車のキーを隠すなどの工夫も行いました。これは決して信頼を失う行為ではなく、母を事故から守るための愛情と割り切っています。

愚痴は半年以上続きましたが、私が運転して外出する機会を増やしていくことで徐々にその愚痴も減っていきました。車で外出するだけでなく、天気の良い日は庭で草取りをするなど、母自身が時間の過ごし方を工夫するようになったことも愚痴が減った理由の一つだと思っています。

まとめ:返納は“家族のチームワーク”で乗り越える

高齢の親の免許返納は、本人・家族・地域が一体となったチームワークが不可欠です。大切なのは、

  1. 返納のきっかけ(金銭管理の異変や認知機能低下)を見逃さない
  2. 寄り添う言葉かけ(心配・安全を第一に)で説得する
  3. 多様な代替手段を提示し、実感してもらう
  4. 支え合う工夫(鍵の管理や福祉サービス活用)で長期的にフォロー

を意識すること。返納は単なる“やめさせる”行為ではなく、安全で豊かなセカンドライフを支援するスタートです。同じような悩みを抱える方々の参考になれば幸いです。

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