
― ゴーヤ事件から学んだ“気づきと実践”の記録 ―
はじめに ― 強烈なニオイの犯人はタンスの中のゴーヤだった
ある夏、母の部屋に漂う“青臭い腐敗臭”に気づきました。原因を探してタンスを開けるとタオルに包まれた腐ったゴーヤが――。「これが臭いの元だったのか」と胸をなでおろした一方で、食べ物を隠す認知症の症状を現実のものとして突き付けられました。
本記事は、そんな体験を日記のように振り返りながら、調べてわかった背景知識と、わが家で実践した・あるいは検討中の工夫を具体例として紹介します。
1. 親の嘘や隠し事の実例 ― 我が家で実際に見つかった“迷子の品々”

- タンスの引き出しで腐ったゴーヤ
- ハンカチを入れている引き出しに一袋のインスタントラーメン
- 布団の間で発見された一袋のパンケーキのお菓子
- 洗面台の下にしまわれた夕食の残り物
- ソファーの隙間からこたつの上に置いていた支払用の1万円札
どれも「盗られると思った」「明日のために取っておいた」と本人は説明します。家族から見れば“嘘”に映りますが、認知症の症状としては自然な流れで起こる“作話”や“物盗られ妄想”が関わっています(詳しくは次章)。
2. 認知症との関係を知る ― 調べてわかった3つのメカニズム

2-1. 作話(さくわ):記憶の空白を埋める自衛策
短期記憶が抜けると、”思い出せない不安”を埋めようと本人の脳がストーリーを生成します。家族には虚偽に映っても、本人にとっては理路整然とした「事実」です。
2-2. 物盗られ妄想:隠して忘れて疑う負の循環
「隠す→忘れる→盗まれたと思う」の三段跳び。夕方以降の不安が強い時間帯に起こりやすく、隠さなくても安心できる環境づくりが鍵だと専門家は指摘しています。
2-3. 嗅覚・味覚の変化と腐敗リスク
高齢になると嗅覚が鈍り、傷んだ食品のにおいに気づけません。認知症で判断が鈍ると「大丈夫」と確信してしまい、食中毒リスクが跳ね上がります。
3. 家族の戸惑いと反応 ― ゴーヤ事件で感じた“安堵と次への不安”

私が感じたこと | 具体的な心情 |
---|---|
原因がわかり安堵 | 「ニオイの犯人が判明!ひとまず安心した」 |
繰り返しへの不安 | 「また別の場所で腐らせたらどうしよう」 |
対策への迷い | 「叱っても逆効果? 何をどう変えればいい?」 |
ポイント
怒鳴ったり責めたりはせず、まずは「原因がわかってよかったね」と共有。安心感を積み重ねるほうが、行動変容につながりやすいと感じました。
4. 接し方の改善とアイデア ― “定位置リセット”を軸にした3ステップ

4-1. 毎夕の“定位置リセット”ルーティン(わが家で実践)
- 食後に片づけタイム
- 皿・箸・保存容器・財布などを決めた場所に戻す
- 数を意識してチェック
- コップが1つ足りない→その場で一緒に捜索
- 見つかったら共有メモに記録
- スマホの共有メモに「今日の迷子はここ」と書いておく
効果
・腐敗食品の発見はゼロになり、
・「盗まれた」発言は週4回→週1回以下に減少。
4-2. 検討中の追加アイデア(案として紹介)
アイデア | 期待できるメリット | 実施のハードル |
---|---|---|
ホワイトボード式 食材管理ボード | 入れた/出した食材が一目でわかる | 書き忘れがあると逆効果 |
“宝探しゲーム”方式の捜索サポート | 探し物がレクリエーションになる | 本人がゲーム感覚を嫌がる場合も |
スマートタグの装着 | 財布や鍵の所在をアプリで即確認 | デジタル機器に拒否感があると難しい |
4-3. “安全ゾーン”誘導プラン(詳細案)
- 密閉容器+本人専用スペースを用意し、「ここなら取られない」と納得してもらう
- 生鮮食品は日付ラベル付タッパーで冷蔵庫の目線位置へ
- 定位置写真をプリントして貼り、視覚サポート
これらはまだ試行段階ですが、専門家や家族会で推奨される方法で、隠す必要性を心理的に減らすことが狙いです。
5. 利用した支援サービスとツール

- 地域包括支援センター
- 日常生活自立支援事業を紹介され、通帳・印鑑を一時的に預けて安心材料を確保。
- 家族会(認知症カフェ)
- 同じ悩みを語り合い、“定位置リセット”のコツを教わる。
- 介護休暇制度
- 片づけと部屋の消臭・大掃除のために有給を確保し、自分の心身もリセット。
- ICTツール(見守りカメラ・スマートタグなど)
- 現在は試用段階。導入コストと本人の抵抗感を見ながら調整中。
まとめ ― “片づけルーティン”が嘘と隠し事の早期発見センサーになる

- 嘘や隠し事は病気の症状。怒るよりも原因を知り安心感を与えるほうが建設的。
- 毎日の定位置リセットで「足りない・余っている」をすぐ察知。
- 食材ボードや安全ゾーンづくり、ICT活用など、家庭に合った仕組みを徐々に導入。
- 専門機関とつながり、家族だけで抱え込まない環境を整える。
明日からできるミニアクション
- 皿・箸・財布など“定位置写真”をスマホに撮影
- 夕食後片づけタイムを家族で宣言
- 見つけた“迷子”は共有メモに記録し、次に生かす
ゴーヤ事件はショックでしたが、「原因がわかって安心した」という感情を起点に、わが家は怒らず気づきを増やす仕組みへ舵を切りました。小さな成功体験を積み重ね、笑顔で過ごす時間を1分でも長く増やしましょう。
<参考>ナースペース「妄想・幻覚を訴える場合の対応」<https://www.ns-pace.com/article/category/feature/a7844/>〔最終閲覧 2025-05-13〕
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